対談企画 後編 船橋市 松戸徹市長×船橋市立医療センター 丸山尚嗣院長

低侵襲で安全な医療の提供をめざす
高度ながん治療に強み

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丸山院長
当院の診療で力を入れているのが、がん治療の分野です。
松戸市長
高齢者の人口が増えるなかで、がん治療のニーズは高まっていますよね。
丸山院長
当院は2007年に地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、地域におけるがん治療の中核を担っています。5大がんを中心に、それ以外の症例が少ないがんに対しても、手術治療・放射線治療・化学療法を提供する集学的治療を行っています。
松戸市長
各診療科でレベルの高い治療を実践されているのですね。
丸山院長
はい。手術治療では、2018年から、手術支援ロボットを導入し、低侵襲のロボット支援手術が可能になりました。まずは泌尿器科での手術に対応し、2020年度中には消化器領域にも広げていく予定です。
松戸市長
そうした他の病院ではなかなか導入できない先進の医療機器を、いち早く導入して新しい医療技術を提供することも医療センターに求められている役割です。
丸山院長
放射線治療では、IMRT(強度変調放射線治療)ができる放射線機器を導入。ピンポイントで照射ができるため、より効果的な治療が期待できます。また、化学療法では、外来化学療法室を19床に増やして、さらに多くの患者さんに対応できるようにしました。
松戸市長
働きながら化学療法を受けたいという、若い世代の方たちも増えていますよね。
丸山院長
そうなんです。今は通院で治療ができますので働きながら受けていただけます。また、新しい抗がん剤の開発も進んでいますが、その1つである免疫チェックポイント阻害薬は効果が高いとされる一方で、全身に副作用が出る可能性があります。そのため、当院のような総合病院で治療を受けていただくメリットが大きいです。
松戸市長
幅広く診療科がそろっていることで、安全な医療をめざしているのですね。船橋市は都心へのアクセスも良いため、わざわざ東京の病院に治療に行かれる方もいらっしゃいますが、医療センターで高度ながん治療ができることをぜひ知ってもらいたいです。
丸山院長
本当にそう思います。私たちが提供している医療は、決して大学病院やがんセンターに引けを取りません。この地域の患者さんには、心配せず当院で治療を受けていただきたいですね。
松戸市長
そうしたレベルの高い医療を提供している病院が船橋市にあることは、幸せなことです。入院する場合でも、近くの病院であればご家族も通いやすいですし、退院後の通院にも便利です。医療センターには、これからもこの地域で完結する医療をめざしていってほしいと思います。

徹底した災害対策で
いざというときに市民を守る

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松戸市長
今後、船橋市で30年以内に震度6以上の地震が起こる確率は、85%とも発表されています。非常に高い確率で起こる災害に対して、私たちは対策をとっていく必要があります。
丸山院長
当院は災害拠点病院として、毎年の防災訓練、避難訓練、消火訓練を実施し、いざというときの対策を行っているほか、BCP(事業継続計画)を作成し、災害前の準備とその後の復旧に向けての計画を立てています。
松戸市長
千葉県ではここ数年で台風や大雨による災害が相次ぎました。被災した地域も多くありますが、医療センターからはDMATチームが被災地に出動してもらいました。
丸山院長
2019年の台風15号の時には、当院からDMATと災害支援ナースを君津市に派遣し、救援活動を行いました。19号の時には船橋市に水害の恐れがあったため、県からの要請で当院に東葛南部地域のDMATの活動拠点本部を設置。保健所の職員の方と一緒に情報収集にあたり、対策を検討しました。
松戸市長
結果的に船橋市は水害を免れましたが、いざという時の連携体制が確認できたことは貴重でしたね。
丸山院長
はい。実践的な動きが確認できたので、より連携が強化されたと思います。
松戸市長
現在、船橋市では地域防災計画を大幅に見直しているところです。これまでは小学校の救護所を中心として医療計画を立てていましたが、今後は二次救急病院に病院前救護所を設けるように変更します。医療資源を集約させることで、傷病者のトリアージをスムーズにし、重症患者を医療センターへと搬送しやすくなると思います。
丸山院長
病院前救護所には、二次救急病院のスタッフの他、周辺の開業医院の先生方にも集まっていただくことになっていると伺っています。
松戸市長
船橋市は人口が多く住宅が密集しているため、大規模な災害が発生した際に、甚大な被害が予想されている地域です。そのため行政と医療機関が協力して、災害への備えを徹底させておく必要があるのです。
丸山院長
当院も東日本大震災の後に敷地内に井戸を掘り、地下から水を汲み上げられるようにしたほか、自家発電の設備も整えました。しかし、まだまだ災害への備えを強化していかなければならないと考えています。2023年度末に開設予定の新病院は、建物が免震構造になる予定です。いざというときにしっかり病院の機能を維持できるよう、今後も対策を進めていきます。

健康をテーマに街作り
船橋メディカルタウン構想

松戸市長
新病院が開設されるのは、現在の医療センターの南側に位置するエリア。船橋市では、東葉高速鉄道の東海神と飯山満の間に新駅を設置して、それを拠点に病院を中心としたメディカルタウンをつくる計画を進めています。
丸山院長
新駅の近くにできる新病院は、アクセスが良くなりますので、患者さんには喜んでいただけるのではないでしょうか。また、高度医療を提供するためには、手術室やICU(集中治療室)などのハード面の充実が欠かせません。これまで処置スペースが狭いことで外来の待ち時間が長くなったり、手術までお待たせしたりするケースがありましたが、新病院ではそうした患者さんのご不便をできるだけ解消したいと考えています。
松戸市長
現在の医療センターが開設された約40年前とは、医療技術や設備もだいぶ変わってきていますよね。先進の医療技術をしっかりと発揮できるような環境を整え、患者さんが過ごしやすい快適な病院にしていきたいですね。
丸山院長
メディカルタウンという大きな街づくりの構想の中で、市民の皆さんの健康に関わっていけることは私たちの喜びでもあります。
松戸市長
船橋市では「健康寿命日本一」を目標に掲げ、すでにシルバーリハビリ体操や市民ヘルスミーティングといった活動に取り組んでいますが、メディカルタウン構想ではさらにそれを発展させ、医療にかかる前の予防にも力を入れていきたいと考えています。
丸山院長
元気で長生きできるようにサポートしていくのですね。
松戸市長
ええ。全国の自治体調査によると、船橋市は高齢者の身体機能の衰えがとても少ない地域です。しかしその一方で、コミュニティのつながりが薄いと感じている人もいるなど、課題も見えてきました。メディカルタウンはちょうど船橋市の真ん中に位置していますので、そうした課題にも向き合いながら街づくりをしていくつもりです。
丸山院長
食やスポーツなどの文化も計画には取り入れられていますね。
松戸市長
船橋産の新鮮な食材を使ったメニューを提供するオーガニックレストランや、健康な体作りに関わる企業などを積極的に誘致したいと考えています。桜の名所で有名な海老川が近くにあるので、豊かな自然も楽しめます。新病院の病室からは桜並木が見えるかもしれませんね。
丸山院長
私は時々、早朝に海老川沿いのジョギングロードを走ることがあるのですが、近くの高校の陸上部の生徒たちがすれ違いざまに「おはようございます!」と元気に声をかけてくれるので、気持ちがいいです。
松戸市長
健康な暮らしは市民の皆さんにとって、とても大切なもの。医療はその幸せを支える基盤です。
丸山院長
幸せを支える基盤......、重要な役割ですね。しっかりその期待に応えていきます。

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