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腫瘍内科について

概要

近年、悪性腫瘍(いわゆるがん)に対する治療薬は飛躍的に進歩しており、毎年、新しい抗がん剤が次々と承認され、治療成績も改善してきています。それと同時に治療法自体が非常に複雑になってきており、1年たつと推奨される治療法が大きく変わってしまうことも珍しくありません。

現在使用できる抗がん剤の種類は非常に多く、抗がん剤の種類によって期待される効果が異なるのはもちろんですが、たとえ同じ抗がん剤を使用した場合でもがんの細かい分類によって期待される効果が大きく違ってきます。最近ではがん細胞の遺伝子やがん細胞で作られているたんぱく質を調べることで効果のでやすい薬剤を選択できるようにな

ってきています。

 

一方、多くの抗がん剤は副作用が非常に強く、また副作用の出方も薬剤ごとに大きく異なります。そのため、副作用に適切に対応できないと、場合によっては治療が原因で患者さんが命を落としてしまうことすらあります。

このような理由から、抗がん剤を使用するためには悪性腫瘍と抗がん剤に対する十分な知識が必要不可欠となります。そしてこの知識の違いが患者さんの治療中の体調や治療効果に大きく影響し、時には生死を分けてしまうことさえあります。

腫瘍内科は抗がん剤治療を専門に行っている診療科です。患者さんおひとりおひとりに対して最適な抗がん剤治療や放射線治療を選択し、現在の医療が発揮できる最良の治療を提供いたします。

 

日本におけるがんの現状

日本で2014年に新たにがんと診断された人は867,408名(男性501,527名、女性365,881名)と推計されています。罹患数が多い部位は男性では順に胃・肺・大腸、女性では乳房・大腸・胃となっています。2017年のがん死亡は373,334名(男性220,398名、女性152,936名)と推計され、死亡数が多い部位は男性では肺53,002名・胃29,745名・大腸27,334名,女性は大腸23,347名・肺21,118名・膵(すい)臓16,823名となっています(国立がん研究センターがん情報サービス『がん登録・統計』より)。がんに対する治療は日々進歩してきていますが、発症者数も死亡者数もまだまだ多い状況が続いています。

 

肺癌(はいがん)について

現在、死亡者数が最も多い肺癌についてご説明します。肺癌が喫煙と大きく関係していることは広く知られていますが、喫煙をしていない場合でも肺癌が発生することはあります。肺癌の初期には症状がみられず、健診でのレントゲンやCT検査で発見されることが多いですが、進行すると咳、痰、血痰、胸の痛み、息苦しさ、声のかすれなどがみられるようになります。さらに病気が進行すると発熱、体重減少、だるさ、全身の痛み、リンパ節の腫れ、意識障害、けいれんなどの全身の症状が出てきます。

 

肺癌の検査について

肺癌が疑われた場合、気管支鏡検査を含む全身の検査を2週間程度のうちに行い、できるだけ早期に治療を開始できるように心掛けています。肺癌の診断を行うためには多くの場合、気管支鏡という内視鏡での検査が必要です。太さがが4mmから6mm程度の内視鏡を空気の通り道である気管支に入れてゆき、内部の様子を観察したあと、がん細胞の塊を採取します。当院ではできる限り確実に診断するために仮想気管支鏡と呼ばれる画像システムと気管支鏡検査中の超音波検査を組み合わせる最新の方法を使用しています。また、これまで、つらい検査とされてきた気管支鏡検査ですが、当院では検査中に鎮静剤(静脈麻酔薬)を十分に使用し、患者さんの苦痛軽減に努めています。そのため、多くの患者さんはうとうとしているうちに検査が終了し、検査中の様子も覚えていないことが多いです。

 

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写真1: 気管支鏡検査が行われている様子

肺癌の診断がついた場合には他の臓器への転移がないかどうかを調べるために全身のCT検査、脳のMRI検査、骨のシンチグラフィー(骨の転移に集まる薬を注射したあと、集まった様子を画像として評価する検査)、必要に応じてPET検査(がん細胞に集まる薬を注射したあと、集まった様子を画像として評価する検査)を行います。

さらに抗がん剤での治療が必要な場合には、最適な抗がん剤を決定するためにがん細胞の遺伝子やがん細胞表面に出ているたんぱく質を調べる検査を行います。当センターでは治療選択に特に重要なEGFR遺伝子変異とALK遺伝子転座の検査を院内で実施することによりわずか3日で結果が得られる体制を確立しています。

 

肺癌の治療について

肺癌の治療法には手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤での治療)、免疫療法、緩和療法(症状を和らげる治療法)があり、これらを単独または組み合わせて治療してゆきます。早期の一部をのぞいて何らかの形で化学療法が行われます。

治療方針を決定するにあたり、患者様や腫瘍に関する十分な情報を得ることが非常に重要になります。具体的には、患者様の状態(年齢、内臓の働き、体力など)、肺癌の種類(組織型)、病気の進行の程度(病期)、がん細胞の遺伝子に異常があるか(EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転座、ROS1遺伝子転座、BRAF遺伝子変異)、免疫チェックポイント阻害剤の効果が期待できるたんぱく質(PD-L1)がみられるか、などについての情報がとても大切です。これらの情報を参考にしながら呼吸器内科・呼吸器外科・放射線治療科・腫瘍内科医が合同でキャンサーボードという診療会議を行い、患者様の生活背景も含め、十分に議論して治療方針が決定されます。つらい症状のある患者様には初期から症状を和らげるための治療を開始するのはもちろん、状況に応じて緩和ケアチームや放射線治療科と協力して少しでも苦痛を軽減できるように心がけています。

当院では1回目の化学療法は患者様の状態を確認させて頂くために原則的に入院で行わせていただきます。その後の化学療法は状況に応じてできるだけ短期の入院や、可能であれば外来での治療を行っていきます(外来化学療法)。外来化学療法の場合にはE棟2階の外来化学療法室で行っています。

腫瘍内科2.png写真2: E棟2階の化学療法室の様子

 

免疫チェックポイント阻害剤とは

2015年に免疫チェックポイント阻害剤であるイピリムマブやニボルマブが初めて悪性黒色腫に対して使用されるようになって、3年以上が経過しました。

もともとヒトにはがん細胞を排除する免疫力が備わっており、その中心をT細胞(リンパ球と呼ばれる白血球の一種)が担っています。ところが、がん細胞はT細胞表面のPD-1を介して、がん細胞への攻撃にブレーキをかけることでT細胞からの攻撃を免れようとします。免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞がT細胞のブレーキをかける作用をじゃますることにより、がん細胞に対する正常な免疫力をとりもどしてがん細胞を排除します。

現在では、ペムブロリズマブやアテゾリズマブ、デュルバルマブなどの新しい免疫チェックポイント阻害剤が開発され、非小細胞肺癌や頭頚部癌、腎細胞癌、胃癌、古典的ホジキンリンパ腫、尿路上皮癌、悪性中皮腫、高頻度マイクロサテライト不安定性を有する固形癌など、多くの悪性腫瘍に対して使用可能となっています。

非小細胞肺癌については長期にわたる成績が明らかとなり、5年生存率が16%と報告されています。生存されている患者さんの中には、治療が終了しているのに腫瘍が大きくならない患者さんも含まれ、従来、治癒が困難であった進行がんであるにもかかわらず治癒がもたらされた可能性が指摘されています。

非小細胞肺癌に対しては従来の抗がん剤との併用療法も行われるようになり、さらに高い効果が期待できるようになりました。

免疫チェックポイント阻害座の副作用は軽いことが多いのですが、免疫力が過剰に活性化することによる副作用(有害事象)が一定の頻度で出現します。これらはあたかも新しい病気が発症したかのように起きてきます。これまでに間質性肺炎や肝炎、甲状腺機能異常、大腸炎、劇症型の1型糖尿病、重症筋無力症、神経障害などが報告されており、副作用による死亡も報告されています。非常にやっかいなことに、こられの副作用が、いつ、どのような患者さんにみられるかを予測することはできませんが、体力が非常に低下している場合や自己免疫疾患にかかったことがある場合、肺炎(特に間質性肺炎)にかかっている場合では特に注意を要します。

 

他院との連携について

近年、がんゲノム医療が話題になっております。そのさきがけといえるのが国立がん研究センター東病院を中心として行われているLC-SCRUM-Japanとよばれるプロジェクトです。がんゲノム医療とはがん細胞の遺伝子を詳細に調べ、効果の期待できる薬剤が見つかった場合には、まだ承認されていない薬剤であっても治験や臨床試験という形で提供しようというものです。当センターもLC-SCRUM-Japanの参加施設ですので必要に応じて詳細な遺伝子検索も可能です。

 

大腸癌について

悪性腫瘍に占める大腸癌の死亡者数は男性では第三位、女性では第一位です。根治切除(完全に治すための手術)ができない大腸癌で全身状態が良い場合には、抗がん剤での治療が行われます。治療を行わなければ生存期間の中央値は8か月程度ですが、化学療法を行うことで30か月を超える生存期間が得られるようになってきています。しかしながら完全に治すことはまだ難しい状況が続いています。

 

大腸癌の化学療法について

癌細胞に遺伝子変異(RAS遺伝子変異、BRAF遺伝子変異)がないか、最初にできた大腸癌の部位が右側であるか、左側であるか、マイクロサテライト不安定性(遺伝子の複製ミスが起こりやすいことが原因で生じた癌であるかを調べる検査)があるかによりに効果的な治療法が決まってきます。

最初の治療、あるいは2番目の治療としては、オキサリプラチン、フッ化ピリミジン系の薬剤、イリノテカンを組み合わせ、さらにRAS遺伝子変異がない場合にはEGFR抗体(セツキシマブやパニツムマブ)を、その他の場合には血管新生阻害剤であるベバシズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプトなどを併用します。治療薬の種類によっては、中心静脈ポート(心臓に近い太い血管に薬剤を入れるための管がつながった点滴の針の受け皿)の埋め込み手術が必要となります。これらの点滴での治療で効果がみられなくなった場合にはトリフルリジン・チピラシル塩酸塩やレゴラフェニブなどの内服薬を使用してゆきます。また、癌細胞からマイクロサテライト不安定性が証明された場合には免疫療法チェックポイント阻害剤であるペムブロリズマブによる治療効果が期待できます。

 

胃癌について

悪性腫瘍に占める胃癌の死亡者数は第三位となっています。近年、ピロリ菌との関連が発見され、健診による早期発見や除菌治療が行われるようになり、死亡者数は減少傾向となっております。

 

胃癌の化学療法について

根治切除(完全に治すための手術)ができない胃癌で全身状態が良い場合には、抗がん剤での治療が行われます。胃癌に対する化学療法は最近の進歩により高い腫瘍縮小効果が得られるようになってきていますが、完全に治すことは難しい状況が続いています。生存期間の中央値は6~14か月とされています。

胃癌細胞にHER2と呼ばれるタンパクがみられる場合には、内服薬であるカペシタビンあるいはS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)と白金製剤であるシスプラチン、HER2タンパクに対する抗体製剤であるトラスツズマブの併用療法がおこなわれます。HER2タンパクがない場合にはカペシタビンあるいはS-1、白金製剤であるシスプラチンまたはオキサリプラチンを組み合わせた治療が行われます。最近では大腸癌で行われるFOLFOX療法(5-フルオロウラシル+レボホリナートカルシウム+オキサリプラチンの併用療法)も使用できるようになりました。FOLFOX療法を行う場合には中心静脈ポート(心臓に近い太い血管に薬剤を入れるための細い管がつながった、点滴の針の受け皿)の埋め込み手術が必要となります。

最初の治療で効果が得られなかった場合にはタキサン系の抗がん剤であるパクリタキセルと血管新生阻害剤であるラムシルマブ併用あるいは単独療法、さらには免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ、あるいはイリノテカンが用いられます。

 

 

腫瘍内科の診療実績

腫瘍内科では肺癌を始め、胃癌、大腸癌、膵臓癌(すいぞうがん)、縦隔腫瘍、原発不明癌など、悪性腫瘍に対して幅広く治療を行っております。また、合併症があるために他の医療機関で治療を断られてしまったような患者様に対しても極力お力添えできるようにいたしますので、まずはご相談ください。

以下に2018年4月から2019年3月に入院で治療が行われました疾患の内訳をお示しします(重複なし、緩和療法のみも含まれます)。

                                           平成30年度入院疾患内訳

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おわりに

近年、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など、多くの抗がん剤が開発されてきています。これらを上手に使い分けてゆくことで、お元気でいられる時間を1日でも長くしたいと考えております。もちろん、患者様の体力や病気に対するお考えはおひとりおひとり異なると思いますので、そのような点もふまえ、最善の治療を一緒に考えてゆきます。さらに、疾患によっては、さらに専門性の高い施設へのご紹介、あるいはセカンドオピニオン外来の受診をしていただいております。

船橋市立医療センターでがん診療を受けて本当によかったと思っていただけるように努力してまいります。

 

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