概要

乳腺疾患全般の専門的な診断・治療を行っています。対象疾患として、乳がんのほか、乳腺症、線維腺腫、葉状腫瘍、乳腺炎などを扱っています。血性乳汁分泌、ステレオガイド下生検を要する石灰化など、診断困難な所見にも対応しています。

近年の乳がん診療の急速な進歩に伴い、専門化が加速する一方で、さまざまな職種が力を合わせたチーム医療が必要となってきました。

当院では、日本乳癌学会乳腺専門医5名、日本看護協会乳がん看護認定看護師2名、常勤の形成外科医師2名、常勤の放射線治療医師3名を擁し、さらに、日本産科婦人科学会産婦人科専門医の資格を有する乳腺医師というスタッフが揃っています。(令和6年4月現在)。

これは県下でも数えるほどしかないくらいの充実した体制です。

そして2018年4月からはさらに高度な乳がん診療を目指していくために、乳腺部門を開設致しました。

乳がん患者さんは増え続け、現時点での日本人女性における生涯罹患リスクは10.6%(9人に1人)といわれていますが、①正しく診断してきちんと治療すれば治りやすいがんである ②若年の働き盛りや子育て世代に多いため、治療以外のさまざまな問題を抱えて闘病していかなければならない、という面があります。

このため、手術・薬物療法・放射線治療を組み合わせた、オーダーメイドの「集学的治療」を行うことが重要であり、同時に、精神面や、就労・在宅療養のための支援、症状緩和のための治療などが必要となってきます。乳腺部門では、こういった全てのことを各部門が連携して行ないます。

乳房温存療法に関しては、整容性と根治性のバランスのとれた手術を行うことを心がけており、術後の放射線照射も継続して当院で行っています。乳房切除(全摘)を要する患者さんについては、形成外科と連携の上、乳房再建(同時、異時とも)を積極的に行っています。センチネルリンパ節生検や温存療法の断端評価に際し、術中病理診断に力を入れているのも当院の特徴で、高い精度を保っています(2013-19年の温存療法における、術後の断端陽性率は2.9%と極めて低率でした)。

一方で、転移・再発乳がんの患者さんに対しても、最新のエビデンスに基づいた適切な治療を提供することを心がけています。日本看護協会乳がん看護認定看護師・日本病院薬剤師会がん薬物療法認定薬剤師を含めた各スタッフが連携して細やかに対応し、初期から終末期に至るまでさまざまな乳がん患者さんに寄り添うことをモットーにしています。

さらには、2019年5月から遺伝カウンセリングの外来を開設し、関連する検査なども可能になりました。これからも、乳腺診療におけるあらゆるニーズに答えられるように日々努力してまいります。