概要

 当院脳神経外科は、船橋市を中心にその近隣の地域から脳疾患が疑われる重症患者さんを24時
間365日体制で受け入れています。当院に救急搬送される患者さんは、脳卒中(脳梗塞、脳出血、
くも膜下出血)が多くを占め、次いで重症頭部外傷、脳卒中後のてんかん重積発作などです。緊急
手術やカテーテル治療を要することも多く、チーム体制で迅速な対応を行っています。もちろん 
迅速な治療が必要な疾患だけでなく、未破裂脳動脈瘤や頚動脈狭窄症に対する予防的治療、脳腫
瘍や機能的疾患(三叉神経痛、顔面けいれん)に対する治療も行っています。
 当院では外科的(開頭)手術、血管内治療のいずれの治療も可能であり、患者さんの状態(年齢、
併存疾患など)により治療選択を行い、時には両手技を用いた複合的治療も行っています。
 患者さんの状態や生活環境、社会背景を十分考慮した過不足のない医療を心がけ、個々の患者
さんに適したより良い医療が提供できるよう尽力しています。

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)について

 脳卒中センター、SCU*での24時間体制のチーム医療によりその予後の改善が得られています。
 下記疾患に対して、ガイドラインに基づき標準的治療を行っています。

【脳梗塞】
 ・発症後4.5時間以内の超急性期脳梗塞に対して、血栓溶解薬(t-PA)静注による血栓溶解療法
 ・脳主幹動脈閉塞に対して、血管内治療による血栓回収療法

【くも膜下出血(特に破裂脳動脈瘤によるもの)】
 ・コイル塞栓による血管内治療
 ・開頭によるクリッピング術、時にバイパス併用

【脳出血】
 ・手術が必要な患者さんでは、開頭血腫除去術や小開頭による神経内視鏡手術

【脳動静脈奇形】
 ・開頭摘出術、血管内塞栓術、放射線照射の単独治療、それらを組み合わせた集学的治療

SCUについて
 2014年11月から脳卒中超急性期~急性期の治療を行うための「Stroke care unit (SCU)」を
開設し、2022年4月から「一次脳卒中センター (Primary Stroke Center:PSC)コア施設」の認
定を受け、現在SCU 9床で脳卒中を24時間体制で診療しています。
 またSCUでは、医師、看護師、薬剤師のみならず、専任のリハビリテーションスタッフが
急性期から病状に応じた訓練を行い、回復期リハビリテーション病院への円滑な転院や退院支援
を行う医療ソーシャルワーカーや退院支援看護師も関わり、患者さんやご家族の支援のたの
脳卒中相談窓口も設置し、脳卒中診療に精通したスタッフの密な連携によるチーム医療を提供して
います。

【予防的治療について】
 ・未破裂脳動脈瘤(出血を起こしていない脳動脈瘤)に対する破裂予防の治療
   脳動脈瘤の部位、サイズ、形状、年齢、併存疾患などを考慮し、開頭手術、血管内治療の
   治療選択を行っています。
   血管内治療では、フローダイバーターというステントを留置する最先端の治療も行って
   います。
 ・頚動脈狭窄症に対する脳梗塞予防の治療
   適応基準に基づき、中等度以上の狭窄、不安定プラークに対して頚動脈内膜剥離術(CEA)、
   頚動脈ステント留置術(CAS)の治療選択を行っています。
 ・もやもや病、主幹動脈閉塞症に対するバイパス術
   脳血流検査を含めた十分な検査を行い適応基準に基づき手術を行っています。

脳腫瘍について

 脳腫瘍では、良性腫瘍を主体に外科的手術を行い、脳原発の悪性腫瘍については遺伝子診断に
よる術後化学療法の専門性が高まり、市中病院での治療には限界があるため専門施設に治療を
お願いすることが多くなっています。

その他

・三叉神経痛に対する薬物療法・手術療法、顔面けいれんに対する手術療法も専門的に行って
 います。
・治療困難例について
  高難易度手術や当院で対応できない病気に対しては千葉県や東京都の大学病院、その他高度
  先進医療を行う病院にご紹介させていただきます。
・リハビリテーションについて
  急性期よりリハビリテーションを開始し、早期離床・早期退院を目指していただきます。
  長期間のリハビリテーション(回復期リハビリテーション)が必要な場合には、リハビリテー
  ション専門病院に転院していただきます。転院の際には、千葉県内の病院で連携を図った
  脳卒中地域連携パスを活用し、円滑な転院ができるようになっています。

患者さん・ご家族にご理解いただきたいこと

・医療は不確実、さまざまな危険性
  病気やケガだけだなく、医療行為そのものにも危険性があります。医療は不確実なものです。
 薬剤には効果がありますが、副作用もあります。また薬剤を休薬するときにその影響が出る 
 こともあります。検査にも手術にも何らかの危険性があります。「病気やケガを治すために、
 これだけはどうしても必要」という医療行為もあります。
・さまざまな臨床経過
  脳神経外科が対応する疾患や外傷は、命に関わるものが多くあります。経過の初期段階では
 検査で異常が見つからなかったり、診断がつかなかったりすることもあります。下の図のよう
 に様々な臨床経過があり、初期段階ではどのような経過になるか断定はできません。

グラフ

・転院のお願い
   当院は重症患者さんを受け入れる急性期病院であるため、できるだけ常時患者さんを受け
  入れるために状態が安定した患者さんには、病状に適した病院に転院していただいています
  のでご了承ください。

脳神経外科で扱う疾患

 当科で扱っている主な疾患は、下記の如く多岐にわたっています。

疾患分類 対応疾患
脳血管障害 くも膜下出血、脳動脈瘤、脳出血、脳動静脈奇形、脳梗塞、
頸部内頸動脈狭窄症、もやもや病、硬膜動静脈瘻など
脳腫瘍 良性腫瘍(髄膜腫、聴神経腫瘍、下垂体腫瘍、松果体部腫瘍など)
悪性腫瘍(転移性脳腫瘍、神経膠腫など)
頭部外傷 急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、脳挫傷、外傷性クモ膜下出血、
慢性硬膜下血腫など
機能的神経疾患 顔面けいれん、三叉神経痛、舌咽神経痛など
その他 水頭症(正常圧水頭症)、キアリ奇形、感染性疾患など