臨床研修病院

1.臨床研修病院とは

初期臨床研修制度の変遷をたどると、昭和21年に実地修練制度(いわゆるインターン制度)が創設され、医学部卒業後、医師国家試験受験資格を得るための義務として1年以上の実地修練を必要とされました。その後、昭和43年に臨床研修制度が創設され、医学部卒業後に医師国家試験を受験し、医師免許取得後2年以上の臨床研修を行う努力規定が設けられました。当院は平成9年に厚生労働省から臨床研修病院の指定を受け、独自に研修医教育に携わってきました。さらに、平成16年に新医師臨床研修制度が発足し、2年以上の臨床研修必須化がなされました。必須化にあたっては、医師としての人格を涵養し、プライマリ・ケアの基本的な診療能力を習得するとともに、アルバイトせずに研修に専念できる環境を整備することを基本的な考え方として、制度が構築されています。
また、臨床研修病院には、基幹型臨床研修病院と協力型臨床研修病院という二つの種類があります。基幹型臨床研修病院とは、厚生労働省の定める基準を満たすことで、独自の研修プログラムを作成し、研修医の指導を行う病院です。協力型臨床研修病院とは、基幹型臨床研修病院の研修プログラムの一部を担当する病院です。当院は基幹型臨床研修病院に指定されています。

2.臨床研修の特色

当院は人口64万人の市立基幹病院として、救急、高度専門医療、地域連携を3本柱に診療を行っています。また、人口110万人の地域三次救命救急センターを併設しており、豊富な症例を経験し、かつ救急医療、高度医療を経験できます。地域研修は、市内および釧路の病院、診療所と連携をとりプログラムを組んでいます。教育プログラムとして、毎月臨床症例検討会や救急医療をテーマに指導医が工夫をこらした臨床研修講義を行っています。また、臨床病理検討会を開催し研修医が主体的に参加し討論をできるように工夫しており、さらに、研修医全員がAHA公認のBLS・ACLSコースを受講するシステムを構築しています。医療安全管理室を始め多くの委員会が、安全かつ安心して研修できる環境の整備に努めており、また、悩みや疑問点などを直接相談できるメンター制度を導入しています。院内図書室は国内外の豊富な雑誌を有し、インターネットを通じた文献検索等も充実しており、他施設からの文献の取り寄せも迅速に行えます。新規図書購入に研修医枠があり、研修医の意見を反映した蔵書の整備を図っています。

3.プログラム責任者からのメッセージ

臨床研修においては医療という日常を単純な治療行為としての反復として捉えるのではなく、逆に医療人として成長するために日々遭遇する挑戦的場面として捉えていくことが最も大事なことだと思います。当院での研修は「他施設で経験できないような数多くの症例を通して、成熟を養う場である」との考えに基づいて指導しています。Benjamin Disraeliの言葉に「心の中で素晴らしい考えを育てるのだ。なぜなら自分が考えている人間以上に素晴らしい人間にはなれないのだから。」という一節があります。研修医として当院で研修される若い人たちには志を持って欲しいと思っています。志が自分を育ててくれます。研修は競争ではありません。一生懸命こそが一番楽しいのだと思います。また研修医時代には「決して嘘をつけない師を持つこと」をおすすめします。研修のことであるいは将来のことで悩んだ時には、とことん悩み抜いて、そんな時、良き師に相談できるような臨床研修病院を目指しています。
(臨床研修センター長兼心臓血管センター長兼循環器内科部長 福澤 茂)

4.先輩研修医からのメッセージ

当院には教育熱心な先生方が多く、知識や基本的な手技(気管挿管、胸腔ドレーン挿入、中心静脈カテーテル挿入など)を丁寧に教えてもらえます。しっかり見守られている環境で、研修医自身の意見を尊重してもらえるため、自ら考える力がつきます。BLS・ACLS・緩和ケア講習の資格も得られ、毎月行われる勉強会や各科での抄読会など学ぶ機会はたくさんあります。三次救急を担う基幹病院であり、高エネルギー外傷や心肺停止などの重傷症例を多く経験できます。特に、当院ではドクターカーを導入しており、研修医も指導医と共に搭乗し現場での救急医療を経験します。また、研修医の主な当直内容は夜間・休日の救急外来のfirst touchであり、問診・検査を行って鑑別を考え、指導医からの手厚いフィードバックを受けます。各科の垣根が低いためコンサルトしやすく、幅広い視野を持つことができるようになります。2学年合わせ24人で、研修医同士で学び合うことも多く、充実した研修生活になると思います。